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寿清庵 原宿店:喧騒の裏で出会う、本気の「濃い」抹茶クレープ

寿清庵 原宿店:喧騒の裏で出会う、本気の「濃い」抹茶クレープ

流行が目まぐるしく移り変わる街、原宿。その中心地、神宮前の路地裏に、まるで時が止まったかのような深い静寂と、鮮烈な「緑」を湛える一角があります。それが、今回ご紹介する「寿清庵 原宿店(ことぶきせいあん はらじゅくてん)」です。

ここは、単なる「抹茶スイーツ」のお店ではありません。抹茶という素材そのものと真摯に向き合い、そのポテンシャルを最大限に引き出した「作品」とも呼べるクレープに出会える場所。

この記事では、なぜ多くの人々がこの小さなスタンドに足を運び、その一口に魅了されるのか、その秘密に迫ります。甘いだけではない、抹茶本来の奥深い世界を体験した記録です。

お店の基本情報

  • 店名: 寿清庵 原宿店 (ことぶきせいあん はらじゅくてん)
  • 住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1丁目7−5 103
  • アクセス: JR「原宿」駅 竹下口より徒歩約5分
  • ウェブサイト(Instagram): https://www.instagram.com/kotobukiseian_harajuku_matcha
  • 営業時間: 不定休(公式Instagramにて要確認)
  • 特徴: テイクアウト専門。お茶の「濃さ」を選べる抹茶クレープが中心。

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流行の街で「本質」を貫く。寿清庵の魅力

原宿の、特に竹下通り周辺といえば、カラフルで目を引くスイーツの激戦区。その中で、寿清庵が放つ存在感は異質です。まず目を奪われるのは、その商品写真からでも伝わる、圧倒的な「緑の濃さ」。

このお店の魅力は、その「妥協のなさ」に集約されています。

一般的に「抹茶味」として流通するお菓子の多くは、砂糖の甘さやミルクの風味が前面に出ています。しかし、寿清庵が目指すのはそこではありません。主役はあくまで抹茶。抹茶が持つ、気高い香り、鮮烈な苦味(しぶみ)、そしてその奥にある深い「旨味(うまみ)」をどう伝えるか。そのための最適な解が、このクレープという形だったのでしょう。

使用する抹茶は、品質に徹底的にこだわった高級なもの。それを惜しげもなく使用したクレープ生地は、もはや「緑色」というより「深緑」です。

価格だけを見れば、一般的なクレープより少し高価に感じるかもしれません。ですが、これは「体験」への対価です。これほど高品質な抹茶を、これほどダイレクトに、しかもワンハンドで楽しめるという「価値」を考えれば、そのコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。

「原宿だから」という理由で足を運ぶのではなく、「本物の抹茶を体験したいから」という目的で訪れるべき、専門店の風格が漂っています。

体験レビュー:五感で味わう抹茶の世界

お店は小さなスタンド形式。メニューはシンプルで、その潔さが期待を高めます。訪れた日も、国内外からの訪問者で静かな列ができていました。

今回選んだのは、シグネチャーメニューを含む3品。その味わいを詳細にお伝えします。

【八(エイト)】

寿清庵を象徴する、最も人気の高いメニューがこの「八」です。おそらく、抹茶の濃さのレベルを示しているのでしょう。

手渡された瞬間に、まずそのずっしりとした重みと、ふわりと漂う抹茶の青々しい香りに驚かされます。クレープ生地は、美しい深緑色。一般的な薄い生地とは一線を画し、もっちりとした、まるで上質な生菓子のような弾力があります。

一口いただくと、想像を遥かに超える衝撃が走りました。

まず訪れるのは、「甘さ」ではなく「鮮烈な苦味」。しかし、これは決して不快なものではなく、上質な抹茶だけが持つ、輪郭のはっきりした「渋み」です。その直後、生地に練り込まれたクリーム(おそらく、甘さを極限まで抑えた生クリームか、マスカルポーネ)のまろやかなコクが、その苦味をそっと包み込みます。

食べ進めるうちに、苦味とコク、そして生地自体のほのかな甘みが複雑に絡み合い、最後には抹茶特有の「旨味」と、鼻に抜ける爽やかな香りの余韻だけが残る。

これは、もはやクレープというより「食べる抹茶」と呼ぶべき一品。甘いものが苦手な方にも、自信を持って推奨できます。

【抹茶ティラミスクレープ】

「八」が抹茶の純粋な力を表現しているとすれば、こちらは抹茶と乳製品の「調和」を追求した一品でしょう。

もっちりとした抹茶生地の上には、真っ白なマスカルポーネチーズのクリームがたっぷりと乗せられ、仕上げにこれでもかというほどの抹茶パウダーが振りかけられています。

こちらは「八」と比べると、マスカルポーネの酸味とミルキーなコクが加わるため、よりデザートとしての側面が強い印象。しかし、主役はやはり抹茶。表面のパウダーのダイレクトな苦味と、クリームのまろやかさ、そして生地の旨味が三位一体となり、口の中で「抹茶ティラミス」として完成します。

抹茶の強さは欲しいけれど、少しマイルドな入り口から試したい、という場合に最適かもしれません。

【抹茶エスプレッソ】

ドリンクにも、そのこだわりは一貫しています。

「エスプレッソ」と名付けられている通り、これはお茶を点(た)てたものを、そのまま凝縮したような一杯。

小さなカップで提供されるそれは、まさに「飲む緑」。余計な甘みは一切なく、抹茶の持つエネルギーをストレートに体感できます。

クレープと一緒にいただくことで、口の中がリセットされ、次のクレープの一口がまた新鮮に感じられます。また、甘いクレープを選んだ際の、完璧な「締め」としても機能するでしょう。頭が冴え渡るような、清々しい苦味です。

まとめ:本質を知る大人のための、抹茶の聖地

寿清庵 原宿店は、「流行っているから」という理由だけで消費されるべき場所ではありません。

  • 本物の抹茶の味を求めている人
  • 甘すぎるスイーツに飽き足らない人
  • 素材の「本質」を味わうことに喜びを感じる人

こういった方々にこそ、訪れてほしい場所です。

原宿という、情報とモノが溢れかえる街の中心で、「本物」だけが持つ静かな強さを提示し続ける。その姿勢そのものが、何よりの魅力だと感じました。

「抹茶フレーバー」という言葉が氾濫する中で、本当の「抹茶」に出会うことは、意外と難しいものです。このお店が素晴らしいのは、抹茶が本来持つ「旨味」と「高貴な苦味」こそが最大の魅力であると、深く理解している点にあります。

これは、ただ奇をてらって濃くしているのではありません。素材のポテンシャルを信じ、それを最大限に引き出すための論理的なアプローチの結果が、あの「八」というバランスなのでしょう。

味覚にフィルターをかけず、素材そのものと向き合いたい。そんな知的な好奇心を持つ人にとって、ここは原宿で最も刺激的な「体験」ができる場所の一つだと断言できます。

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