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水道橋「さばめしの鯖匠」探訪記。一杯で四度楽しむ、絶品“さばまぶし”体験

水道橋「さばめしの鯖匠」探訪記。一杯で四度楽しむ、絶品“さばまぶし”体験

東京、水道橋。多くの人々が行き交うこの街の地下に、知る人ぞ知る香ばしい煙が満ちる場所があります。ランチタイムともなれば、その煙に誘われた人々が吸い寄せられるように列を作る店、それが「さばめしの鯖匠(さばしょう)」です。

ここは、日本の食卓に馴染み深い「鯖(さば)」という食材の可能性を、極限まで追求した専門店。

一見すると、豪快な焼き鯖が乗った丼。しかし、その実態は、緻密に計算された「ひつまぶし」のように、一度の食事で幾重にも味の変化を楽しめる、まさに“体験型”のグルメスポットなのです。

なぜ、これほどまでに人々はここの「さばめし」に魅了されるのでしょうか。その秘密を探るべく、煙の誘う階段を降りてみました。

お店の基本情報

  • 店舗名: さばめしの鯖匠
  • 住所: 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2丁目21−11
  • ウェブサイト(Instagram): https://www.instagram.com/sabasyo
  • アクセス: JR水道橋駅から徒歩すぐ

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煙の先の楽園。入店から実食までのドキュメント

お店は地下にあり、階段を降りるにつれて炭火で鯖を焼く、食欲を刺激する香りが濃くなっていきます。

訪れる方にまずお伝えしたい重要な点が一つ。人気店ゆえ行列ができていることが多いのですが、列に並ぶ前に、まず店内の券売機で食券を購入するのが「鯖匠」のルールです。これを知っていると、スムーズに入店できるでしょう。

券売機には「さばめし」を筆頭に、「タレさばめし」「ガーリックさばめし」など、好奇心をくすぐるメニューが並びます。今回は基本となる「さばめし」を選び、カウンター席へ。

ほどなくして、お盆が目の前に置かれます。

そこには、丼から溢れんばかりの、見事な照りを放つ焼き鯖。皮目はパリッと、身はふっくらと焼き上げられ、その存在感に圧倒されます。

そして、この「さばめし」の真髄は、卓上に置かれた「さばめしの作法」にあります。

【実食レビュー】“さばまぶし”四変化の作法

■一杯目:まずは、そのままの味を堪能する

まずは、しゃもじで大胆に鯖の身をほぐし、ご飯と混ぜ合わせます。

炭火の香りをまとった鯖の芳醇な脂が、熱々のご飯一粒ひと粒にコーティングされていきます。口に運ぶと、まず感じるのは皮目の香ばしさ。続いて、じゅわっと溢れ出す上質な脂の甘み。これが過度に脂っこくなく、驚くほど上品なのは、丁寧な仕事の証でしょう。

米の甘みと鯖の旨味が一体となった、完成された「混ぜご飯」。これだけでも、延々と食べ続けられそうなほどの引力があります。

■二杯目:薬味と胡麻で、香りの変化を愉しむ

次に、添えられた薬味(刻みネギや海苔)と胡麻を加えて、二杯目へ。

一杯目の力強い旨味に、薬味の爽やかな風味と胡麻の香ばしさが加わると、味わいの輪郭が一変します。特に、ネギの清涼感が鯖の脂をすっきりとさせ、また新たな一口を誘います。

■三杯目:きざみわさびと出汁で、究極の「お茶漬け」に

そして、クライマックスとも言えるのが、この三杯目。

残ったさばめしに「きざみわさび」を乗せ、熱々の特製出汁を注ぎます。

「ジュッ」という音とともに立ち上る湯気。

先ほどまであれほど主張していた鯖の脂が、この出汁に溶け込むことで、驚くほどまろやかで優しいスープへと昇華します。ツンと鼻を抜けるわさびの辛味が、全体の味を引き締め、まさに「ごちそう」と呼ぶべき〆の一杯が完成します。

脂の旨味、出汁の風味、わさびの刺激。すべてが調和したこの味は、日本人で良かったと心から思える瞬間です。

■四杯目(おまけ):無料の「追い飯」と「鮮魚ごま和え」

まだ終わりではありません。出汁茶漬けを堪能した後、もしお腹に余裕があれば、「追い飯」(無料)をお願いできます。

この追い飯に、卓上にある「鮮魚ごま和え」を乗せていただくのが、常連の楽しみ方。この日は真鯛でしょうか、日によって変わる新鮮な白身魚の胡麻和えが、またご飯とよく合います。

一杯の「さばめし」で、これほどまでに多彩な味の旅ができる。これが、「鯖匠」のコストパフォーマンスが群を抜いていると感じる理由です。

どれを選ぶ?魅惑のメニューラインナップ

「鯖匠」の魅力は、基本の「さばめし」だけにとどまりません。何度訪れても新しい発見がある、そのバリエーションの豊かさも特筆すべき点です。

【さばめし】(プレーン)

初めての方に、まず試していただきたい基本の一杯。炭火焼きの鯖そのものの香りと旨味を、四変化で最もストレートに感じられます。

【タレさばめし】

店内で特に人気を集めているのが、この「タレさばめし」。

甘辛く煮詰められた特製のタレが、脂の乗った鯖に絡みつき、まるで上質な鰻の蒲焼を彷彿とさせる濃厚な満足感を与えてくれます。ご飯との相性は言わずもがな。タレが染みたご飯だけでも、お代わりしたくなるほどの美味しさです。

【ガーリックさばめし】

パンチを求めるなら、こちらがおすすめ。

炭火の香りに、食欲をかき立てるフライドガーリックの香ばしさが加わります。鯖の脂とニンニクという、旨味の相乗効果は絶大。スタミナをつけたい日にもぴったりな、背徳感と幸福感が同居する一杯です。

この他にも、「柚子味噌さばめし」や「梅さばめし」、「辛ねぎさばめし」など、訪れるたびに異なる味に挑戦できるのも、このお店がリピーターを離さない秘訣でしょう。

まとめ:ここは「鯖」のエンターテイメント空間

「さばめしの鯖匠」は、単なる「焼き魚定食」のお店ではありません。

それは、馴染み深い「鯖」という食材を主役に据え、食べ手に「次はどうなるんだろう?」というワクワク感を提供し続ける、食のエンターテイメント空間でした。

一見すると、焼き鯖をご飯に乗せただけという、非常にシンプルで大胆な料理。しかし、その裏には、一杯で四度美味しいという、食べ手を飽きさせない緻密な計算と構成が隠されています。

鯖の脂、米の甘み、薬味の香り、そして出汁の温度。これらすべての要素が絶妙なバランスで一体となり、忘れがたい食体験を生み出しているのです。

行列に並んででも、この計算され尽くした「さばまぶし」を体験する価値は十分にあります。水道橋を訪れた際は、ぜひこの香ばしい煙の誘惑に身を任せてみてはいかがでしょうか。

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